もしも私が吐息だったら?

もしも私が吐息だったら
あなたの理性がいちばんゆるむ瞬間を
ちゃんと知ってると思うの。
首すじに落ちる、あたたかい気配。
何もしていないはずなのに
肌の奥がじわっと目を覚ますみたいに
静かに熱が広がっていく。
触れてないよ?
でも、近すぎて
「触れられるより、だめ」って
身体が先に気づいてしまう距離。
耳元に落ちた私に
あなたの呼吸が少しだけ深くなる。
我慢しようとしてるの、伝わってるよ。
抱き寄せるわけでも
キスするわけでもないのに
空気だけで、こんなに乱れてしまうなんて
ずるいよね。
吐息は形がないから
逃げ場も、境目もない。
どこからが私で、どこまでがあなたか
わからなくなるまで
そっと、ゆっくり混ざっていく。
もしも私が吐息だったら
今夜あなたのすぐそばで
何度も、何度も、
言葉にならない熱を
そっと吹きかけるのに。
声にならないまま
いちばん奥まで、静かに届く熱で。
